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せん妄

せん妄とは

 

せん妄(せんもう)とは、一過性の意識障害の一種です。症状は一時的な意識障害であり、幻覚、妄想、怒りっぽさなど様々な精神症状が現れます。せん妄の最中に起こったことは覚えていないことが多いため、「認知症になってしまったのではないか」と心配されるご家族も多くいらっしゃいますが、せん妄は「一過性の」症状であるため、認知症とは異なるものです。しかし、その症状がせん妄によるものなのか、認知症によるものかを判断することは専門家でも難しいく、適切な判断を受けることが望ましいと考えられています。

 

 

せん妄の症状

 

せん妄になると、以下のような症状を呈することがあります。

注意力の低下

一つのことに集中することが難しくなり、最近の出来事が覚えられない、会話の途中で話題が変わる、物事の優先順位がつけられなくなる、などの様々な弊害が生じます。

意識障害

意識が朦朧としたり、混乱することがあります。また、周囲の環境や日付や時間が分からなくなる、等、見当識障害と呼ばれる症状が出ます。

幻覚・幻聴・妄想

「二階にどろぼうがいる」「小さな動物が入ってきた」など、幻覚や幻聴を訴えることがあります。この症状は、特に夜間に生じることが多いです。

睡眠障害

睡眠のリズムが乱れ昼夜逆転することがあります。睡眠障害が起きると、夜間には覚醒し、反対に昼間はウトウトと半分眠っているようになることがあります。

情動・気分の障害

急に怒りだす、興奮する、不安定になる、という、気分が不安定になる。症状が出現することがあります。

これらの症状は認知症により出現する症状と似ています。しかし、せん妄の場合は数時間から数週間でもとの状態に戻ることができます。
ただし、もとに戻るからといって放っておくことは推奨できません。せん妄の症状により恐怖・混乱の状態にあり、辻褄の合わない言動や大きな声を出す行為は、患者さんにとって非常に強いストレスとなるだけでなく、必要な介護を受けることができなくなる、介護者も大変な思いをするなど複数の困難が生じます。
また、せん妄を起こすと昼夜が逆転した状態が続くことも多く、介護者は夜も安心して眠れない状況となってしまいます。よって、患者さんや介護者の負担を軽減するためにも早期の治療が望ましいと考えます。  

 

せん妄の原因

 

せん妄の原因は様々あるといわれていますが、直接因子(身体疾患、薬物の影響)、準備因子(加齢や認知症による認知機能低下)、促進因子(不眠、環境の変化によるストレス)の3つに分類されます。

直接因子(身体疾患、薬剤の影響)

身体疾患や薬剤の影響によるものです。
せん妄を引き起こしやすいとされる薬物としては、がんの痛みを軽減するために使用するオピオイドと呼ばれる薬剤や、睡眠薬や抗不安薬、H2ブロッカーと呼ばれるタイプの胃薬やステロイド剤などがせん妄を引き起こしやすいとされています。

準備因子(加齢や認知症による認知機能低下)

加齢や脳梗塞、脳出血などの脳血管障害、認知症など脳の病気のことを指します。
高齢者やこれらの病気のある方は、若い人に比べてせん妄になるリスクが高く、若い人であれば影響のない直接因子であってもせん妄を生じやすくなります。

促進因子(不眠、環境の変化によるストレス)

具体的には入院などの環境変化、脱水や疼痛、視力や張力の低下などの体調の変化、不安や抑うつなどの精神的なストレスがあげられ、これらの要因がせん妄をさらに悪化させるといわれています。
高齢者は特にせん妄のリスクが高く、認知症や既往歴に精神的な疾患がある人も発症しやすいとされています。せん妄の予防としては、これらのリスク因子をできるだけ減らすことが重要です。  

 

せん妄に似た病気

 

せん妄は、認知症による症状と間違われることが非常に多いです。せん妄と認知症とでは、似た症状を呈することがありますが、まったく異なる病気です。
その大きな違いは、せん妄は一過性であるのに対し、認知症は進行性の病気であるという点が挙げられます。
昼夜逆転や妄想、怒りっぽさなどの特徴的な症状があればせん妄と診断することは比較的簡単ですが、これらのわかりやすい症状が乏しく、物忘れや集中力低下、意欲低下、気分の落ち込みなどが目立つタイプのせん妄(低活動性せん妄)の場合は、類似した症状が認知症でもみられるため、精神科専門医でも診断に迷うケースです。
このように、せん妄か、認知症かの診断が困難な場合には、治療可能なせん妄であるにもかかわらず認知症として見過ごされていることもあるため、認知症を疑った場合には精神科専門医の診察を受け、必要な診断と治療を受けることが大切です。  

認知症については、次のページもご覧ください。

認知症(アルツハイマー病など)

認知症の周辺症状

せん妄の治療

 

原因となる因子の除外 せん妄の治療においては、せん妄の原因に挙げた各因子を取り除くことが大切です。
直接因子としてご紹介した症状の要因となる薬剤を使用しているのであれば、必要最低限に減薬をしたり、脱水や疼痛など、症状をさらに悪化させてしまう促進因子を和らげてあげることで症状が改善することもあります。

そのほか、具体的な対策やアプローチをご紹介します。

生活・睡眠リズムを整える

昼夜の区別をつけリズムを整えるために、日中は日光で部屋を明るくし、夜は暗いところで過ごすようにしたり、日中に視覚、聴覚、触覚などの五感を刺激してあげるような働きかけ(眼鏡をかける、頻繁に話しかける、マッサージをする等)を増やすことが大切です。

環境調整

患者さんの見当識を保つために、日時がすぐに分かるように、見やすい場所へカレンダーや時計を配置したり、会話の中でさりげなく伝えることも良いと言えます。 また、繰り返し確認を行い、理解しているかを確かめることも良いでしょう。その際は、簡潔で分かりやすい言葉を使い、ゆっくり・はっきりとお話することが大切です。

薬物療法

抗精神病薬と呼ばれるお薬を使用することで症状の改善が期待されます。ただし傾眠、動作緩慢、嚥下困難、流涎などの副作用を伴うこともあるため、精神科専門医の指導の下慎重な薬剤調整をすることが必要です。

 

せん妄の治療期間

 

一般的にせん妄は急性の一時的な症状のため、適切に治療を行えば数日から数週間で改善することが多いです。しかし、原因や症状の状態、患者さんの他の疾患の状態などによっては、認知機能が完全に回復するのに長い時間がかかることもあります。高齢者や重度のせん妄の場合、症状が完全には解消しないこともあり、長期にわたり影響が残る可能性があります。

 


以上のように、せん妄は一時的な意識障害ではありますが、患者さんにとってはストレスの強い状態です。また、認知症をはじめとした他の疾患の可能性もあります。 そのため、症状が現れた際には放っておかずに、精神科専門医を受診し、早期の改善が必要となります。

アクセス

180-0006
東京都武蔵野市中町2-15-13 

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関東バス・西武バス・横河入口下車徒歩6分
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診療時間
9:30~13:30
15:00〜17:30
△9:30~13:00、14:00~16:00

休診日 水曜日、日曜日、祝日

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