パニック障害
パニック障害とは
何の前触れもなく突然訪れる、同期や発汗、息苦しさ、吐き気などの体の症状とともに「死んでしまうのではないか」といった恐怖を伴った不安発作がみられる病気です。
発作は数分から数十分続くことが多く、発作を経験した方は発作への恐怖や避け行動により日常生活に支障をきたすこともあります。
パニック障害の症状
パニック障害の主な症状はパニック発作で、強い不安や恐怖感を伴います。
パニック発作が生じている間は、下記のような症状が見られます。
・心臓がバクバクする
・冷や汗をかく
・息苦しさ、息が切れる感じ、窒息感
・体が震える
・胸痛、胸部の不快感
・嘔気、腹部の不快感
・めまい感、ふらつく感じ、気が遠くなる感じ
・寒気、または熱感
・現実ではない感じ、自分自身から離脱している感じ
・どうにかなってしまうのではないかという恐怖
・死ぬことに対する恐怖
このような発作の持続時間は5~20分くらいでおさまることが多く、頻度は1日に数回の方もいれば、1年に2~3度とさまざまです。
また、発作のない時期には「また発作が起きるのではないか」という予期不安がみられることも特徴で、心拍数が上がるような激しい運動を避けるといった行動がみられることもあります。
100人中1~4人が一生に1度はこの症状に悩まされると言い、うつ病や双極性障害、その他の不安症などほかの精神疾患と併発することが多いとされています。
パニック障害の原因
パニック障害の原因はまだ解明されていませんが、脳内の神経伝達物質の働きに何らかの誤作動のような異常が生じることで、不安や恐怖の感情の調節に影響を及ぼし、パニック発作を引き起こしている可能性があります。
他にも、生活の大きな変化やストレスのかかる出来事、トラウマ体験などが、パニック障害のトリガーになることがあります。これには育った環境や現在の生活環境も含まれます。
また、ご家族の中パニック障害や不安障害の方がいらっしゃると発症のリスクが高まる、遺伝的要因も指摘されています。
パニック障害に似た病気
パニック障害に似た症状を示す病気として、他の不安障害(例えば全般性不安障害、社交不安障害、広場恐怖症)、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、うつ病などが挙げられます。
不安障害
不安障害には、慢性的で広範囲にわたる不安が特徴の全般性不安障害(GAD)や、人前から注目を浴びるような社交状況における極度の不安や恥ずかしさを覚える社交不安障害(SAD)、恐怖の対象が特定の状況や場所(公共の場所、広い空間など)に特化している広場恐怖症などがあります。
全般性不安障害(GAD)や社交不安障害(SAD)では一般的にパニック発作は起こりませんが、回避行動や、それにより外出ができなくなるなどして日常生活に支障をきたすという点では類似性があります。また、広場恐怖症はパニック発作を生じることもあります。
これらの不安障害は、パニック障害と類似する点が多いため、専門家による診断を受け、適切に対応することで早期の症状改善が期待できます。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)
PTSDは特定のトラウマ体験後に発症することが多く、フラッシュバックや悪夢、過敏症状が特徴です。パニック障害のような突然の発作が起きることもありますが、発作は必ずしもPTSDの特徴ではありません。
甲状腺機能障害
甲状腺機能障害の中でも、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)では、不安、動悸、震えなどパニック発作に似た症状が生じることがあります。しかし、これは内科的な疾患であるため、症状を改善させるには全く異なるアプローチが必要となります。
当院では、甲状腺機能障害の疑いが無いかを判断するため、採血による検査を行うことがあります。
当院でのパニック障害の治療
パニック障害の治療では、完全に「治す」ということは難しいかもしれません。
しかし、適切な治療を受けることで、多くの場合、発作による症状をコントロールしやすくなり、症状の軽減や発作の頻度を減少させることができます。
当院では、薬物療法を中心に治療を行います。
薬物療法
選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)と言われる副作用の少ない抗うつ薬を使用することが一般的です。
しかし、このお薬は効果を発揮するまでに数週から数か月かかるため、パニック発作が頻回な場合や不安の強い場合にはベンゾジアゼピン系抗不安薬と呼ばれる比較的即効性のある薬を併用することもあります。
心理療法 (認知行動療法)
カウンセラーなどによる心理療法も、パニック障害の治療に有効です。その中でも、認知行動療法と呼ばれる心理療法では、不安や恐怖を引き起こす思考パターンを特定し、それらをより現実的で健康的な考え方に置き換えることを目指します。
また、避けていた状況に徐々に慣れることを通じて、不安を減少させる訓練も行われます。 薬物療法に比べて効果が出るまでに時間がかかることが多いです。
セルフケアや生活リズムの調整
このほかにも、十分な睡眠を取り、規則正しい生活リズムを心がけ、バランスの良い食事を意識することも、身体と心の健康にとって重要です。
また、カフェインやニコチンの摂取は症状を悪化させるため、控えることをお勧めしています。
(※当院では患者さんの状態に応じて治療を実施いたします。また、全ての治療が当院で実施できるということではありません。まずは受診の上ご相談ください。)
パニック障害の治療期間
パニック障害の症状が落ち着くまでの期間は個人差が大きく、症状の程度や、発症してからの期間、お薬や治療との相性等によるため、一概には言うことはできません。
治療の項目でも言及しましたが、一般的な目安として、治療が始まってから症状に改善が見られるまでには、数週間から数ヶ月かかることが多いです。
重要なのは、パニック障害は再発することもあるため、症状の改善が見られた後も、再発予防のために治療を中断せず、必要に応じた治療を継続していくことです。また、症状が改善するまでに時間が掛かることもあると理解したうえで、ライフスタイルを整え、診察や心理療法で得たストレス管理方法を、継続的に実践することが大切です。
パニック障害は治療に時間を要し、症状が良くなった後でも再発することのある疾患です。まずは患者さんご自身や周囲の方がこの疾患について正しく理解をし、専門家の指導のもと、焦らずに治療を続けることが大切です。
アクセス
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